・・・そして2019年の今となり、自主制作映画が大流行り、小劇場公演が増えてゆく中で、「時代劇は、こうである・・・といった観察眼のある方」がどんどん少なくなっている処に、アニメやゲーム、漫画から発生する時代物がさらに増えて、殺陣の世界も相当に変貌を遂げています。
「かの時代に生きた侍が、壁を走り、山を飛び越えるような絵ばかりでは、真の侍のあり方や、生き方までもが信憑性が失われてしまう・・・」
そう生前の林先生は危惧をされておられ、弟子の山野亜紀の提案で、たくさんの資料映像を遺されました。
それが数々に及ぶ「殺陣教育DVD」などの映像たちです。
・・・林先生は、このようなお考えで57年にも及ぶ芸能生活の中で、今の時世を憂い、危険を伴う殺陣の現場を亡くなるまで現役で務めながらも。
お客さまに感動して戴く事はもちろん、常に危険を伴う殺陣の現場において、その安全性を高めるためにもと様々な事を訴え続けて来られたお方でした。
しかしながら、先生の志は今も、ほとんど受け継ぐ人もなく。
たとえば「殺陣のライセンスを発行する組織」はあっても、実際にキャスティングをされる俳優が、「ライセンスを所有しているから、キャスティングをされたなる実績」は殆どないと思います。
昔、京都撮影所では、「主役に絡む俳優(絡みと呼ばれる、スキルのある俳優)」には、ランク制度が存在していました。(NHK・林邦史朗出演「ディープピープル」参照)
主役に傍近い人はAランク、・・・例えばそこで死体となっているのは、Eランクといった感じです。
殺陣師からすれば、そのような俳優の集団(京都撮影所は、株式会社であったので、それが出来たそうです)があり。
必要に応じて、殺陣師がキャスティングも出来た時代であったからだとは思いますが、現在ではプロデューサーが人材を運び、スキルのない人でも殺陣メンバーとしてキャスティングをされてしまう時代です。
「中には顔を見知っている者もいるが、ほとんど見た事もないメンバーで殺陣シーンを構成するのは、疲れる・・・」
そう、林先生は仰っておられました。
俳優付きのマネージャーは皆さん、一様に「この俳優に、殺陣のスキルは有る」と口にされて売り込む訳ですが、「実際に現場で動いてもらってみたら、全然ダメだった」なる事実は、林先生が携わる現場には、相当数にあったそうなんです。
また昨今ともなりますと、「自分、スキルないんですけど、キャスティングされてしまったんで、様になるように、どうかよろしく」といった俳優さんも多くて、実はそこ、私こと山野亜紀も実は、驚いています・・・。(^_^;)
林邦史朗の目指す殺陣の現場は、こうであって欲しいと考えていたのだな・・・という視線で、こちらの資料は俳優の方も、またそうではない方にも、参考にして戴けると嬉しいです。
このHPでは、林邦史朗の研究成果や稽古様式の目録を公開し、映像や文献などを整理した上で必要な方には有償で申し受け、後世に伝える事を目的の一つとしています。