エッセイ集

第52話 「時代劇」って、お金のかかるモノなんですね~☆2月(2008年)

 寒中お見舞い申し上げますというか、今年は東京もわりに雪が降っていますが・・・みなさま、いかがお過ごしでしょうか?

お正月旅行で行った、南伊豆の菜の花畑です♪

 さて昨今、失われかけているらしい・・・と言われているのが日本文化でございます。
 しかしながらまだまだ、昭和一ケタ産まれの私の母(並びに明治生まれの祖母)の教育の下、山野家は、そこは・・・頑張っているっ!!
 まずは、年末行事と言えばやはり大掃除をするが王道でしょう・・・っ!
 血の繋がった兄貴と2人、やりまくり。 (^_^;)
 そして大晦日の夜は、NHKの紅白歌合戦を観賞し、仏壇には・・・私こと山野亜紀の手製の自称・ご馳走(!)を並べて、線香も手向けます。
 それから山野家は、「二年越しの年越し蕎麦」を楽しむ習慣があります。
 ・・・なので毎年、蕎麦は深夜0時を挟んで戴くのですね♡

●また、新年が明けてからは、すぐに近くの神社に初詣に行きます。

 何故かと言えば、新年明けてすぐにしか「お神酒のお振舞が戴けないから!」・・・なんですが★ (^_^;)
 それから3日までは自宅で穏やかに過ごし、それからは・・・近所に住む兄貴の親友と3人、今年は旅行に行きました。 (^_^)v
 ・・・それも場所はリーズナブルにと、熱海から伊豆への民宿の旅です。

このお宿は、何となく取れてしまうのだそうです

 一泊目は、昨年も行って気に入ってしまった、伊豆は松崎町にあります、雲見温泉の民宿「長右ェ門」
 ここのお湯は、本当に良い!(ちょっと、酸ヶ湯温泉のお湯にも似ているかと・・・☆)

 そして、盛りこぼれんばかりの、お刺身の船盛が良いっ!
 伊勢海老にアワビにと、もうもう・・・日本の正月にぴったり!
 夫婦満舟盛(めおとまんせんもり)コースで、幸せ一杯の夕食でした・・・!

●翌日は、南伊豆の下賀茂温泉の民宿「九条」。

 こちらは民宿ながら、露天風呂あり(!)
 お食事は、昨日とはうって変わって、金目鯛のシャブシャブにマグロの中トロや、カツオといった船盛で、気分一新!
 とにかく、日本文化と味覚に浸りまくった、美味しい正月でした。

これが、夫婦満舟盛コース。正月は、これだね!

 その他には、熱海から船で初島にも詣で、伊豆の水族館やら熱海城やら、秘宝館・・・などなど★
 また今井浜の日帰り温泉は、「廉価で眺めが良い」ので、とーーってもお勧めです。
 そして帰りには、兄の意向で天城越えをしまして、浄蓮の滝も観光を致しました。
 天城越えをしながら、石川さゆりさんの演歌を、何度となく熱唱・・・。 (^_^;)
 ふふ・・・車ならでの、恥は掻き捨ての旅ですな。 (^_^)v

●さて・・・年末年始と過ぎて、時代劇が数多く放送をされました。

 NHKでは「雪之丞変化」とか、12時間テレビはもちろんの事。
 また、歴史発見(!)のような番組「天下統一!三武将スペシャル 信長 秀吉 家康~果たして誰が真のリーダーか!?」では、林先生の門下生ーも出演をしておりました。
 またこのHPでもご紹介をしました、「アインシュタインの眼」もそうですよね♪
 ですが・・・テレビ朝日が、時代劇から撤退したとか、そんな話も聞きました。

  ・・・さて、ここで問題です。
 いつまでも、息長く続いて欲しい時代劇ですが、どうして放送を続ける事が難しいのでしょうか。
 「時代劇は、お金が掛かる」とは、良く聞く話なのですが、今回は・・・そんなお話をしてみたいと思います。

●林さんが若かった頃は、時代劇が全盛の時代で、もちろんすべてが生放送(!)

伊豆で有名な熱海城ですが、すぐ隣りにある秘宝館は、笑えるのでオススメです♪

 ・・・立ち廻り的には、前半にまずは小競り合い
 中盤に来て、そこではそこそこ戦って、後半には大立ち廻りになるというドラマ構成だったと聞きます♡
 なので殺陣師さんは、最後の立ち廻りで(残り時間を計ってなどして)時間調整をして殺陣を振り付けた・・・と林先生から聞いています。
 当時の斬られ役なんかは、それこそ斬られては引っ込み、また再び登場をしては、また斬られて・・・といった感じ。
 大変だったそうですけど、こうして聞いてみると、随分と楽しそうなお話ですよね。 (^0_0^)

●林邦史朗氏と行動をしていると、色々と楽しいお話も聞ける事があります。

 とある元カメラマンさんが、こんな話をして下さいました。
 ・・・あるドラマ撮影で、監督さんが、こんな注文を出しました。 
 まずは主役が、向こうから走って来ます。
 そして、ある物を跳び越すのですが、それを下から見上げたような絵にして欲しい
 ・・・ようするに、俳優にカメラを飛び越せという要求をしている(!)のですが、今のようなハンディカメラは、当時はまだ存在しません

 また当時のカメラというのは、現在とは物凄く違って物凄く重たくて大きかった(!)そうですし、また・・・その配線の数も結構なモノだったとか★

撮影初期の頃のカメラは、愛宕山にあるNHK博物館で見れますが・・・これを持ってスライディングかぁ、、、

 そんなカメラを担いで、走り寄る主役を、カメラマンさんは待ちます。
 そうでないと、主役が走ってくる絵が、収録出来ません。 (T_T)
 そして、主役のタイミングに合わせてカメラマンは、スライディングを開始・・・っ!
 主役は無事、カメラを飛び越えたそうですが、カメラを壊す訳にはいかないしで、カメラマンさんは・・・肝の縮む思いをしたそうです・・・★★★
 今だったら、ハンディカメラで軽々収録出来ちゃうカットですが、当時は、決死の行動だったのですよね。 (゜_゜)

●時代劇といえば、時代衣装を付けて、足拵も合わせて、鬘(かつら)を付けて演じるものですよね。

 ・・・例えば、鬘に使われている髪は、人毛だそうです。
 それもパーマなど一度も当てていない長い髪の毛を使って・・・鬘は作られているのだそうですが、それを手に入れるのは、現代日本では難しいもの(!)
 中国とかからの輸入が多いと、人伝えに聞いた事があります。

 これらの鬘は、専門の会社が製作・保管・管理をしていて、その業者は営利団体です。
 「これが商売」となると、鬘屋さんだっては・・・自分の製作した鬘を、いいように使われては困ります。
 それで鬘を借りる場合には、鬘の面倒を見る床山さんが必要となり、その人数に見合った金子(きんす)が必要という事になりますよね。 (^_^;)

これが、常連の滝ィ~♪、です!

 NHK「篤姫」では、例えば大奥のシーンなんていうのも、これからも多く収録をされていくのでしょう。
 ・・・大奥の方々は、身分によって着る物は勿論、髪型も役職に合わせて違う(!)のだそうです。
 鬘の種類も、昔ながらに金型を使った鬘(日舞でも使われる)もあれば、とっても軽い鬘もあったりと・・・色々です。
 さて江戸時代の髪型だと、最近では半鬘が多く使われているようです。
 「総鬘」は、地毛を「羽二重」と呼ばれる布で包んで、その上に鬘を付けますが★
 「半鬘」の場合は、地毛に髷を結い付け、その周りにさらに地毛を利用して鬘に巻きつけていきますが、普通の鬘より地毛を使用する分、支度にとても時間が掛かるんです。

●ところで今度は、衣装の方です。

 テレビ局(または制作会社)では、総ての衣装を現代劇・時代劇を問わず所持して、管理出来る訳ではありません。
 ・・・だって、そんな膨大な衣装の数々を、一体何処に仕舞っておけるというのでしょうか?
 勿論、自前の衣装も使われているのでしょうが、時代劇で使う衣装などは・・・年代は勿論、職業・年代・貧富などなど、余りにも様々ですよね。

「心中天網島・籠釣瓶花魁酔醒」に出演した時の、私の女郎姿★

 そして、使う時は使うでしょうけれど、使わないとなったら、ウン10年は、使わない・・・★ (^_^;)
 そんな「膨大な量の、箪笥の肥やし!」を、テレビ局で収納しきれるハズもなく・・・。
 なのでこれも、専門の会社が製作・保管・管理をしていて、その業者は営利団体です。
 

 ・・・ところで衣装というのは、もちろん着付けが必要になってきます。
 例えば、浴衣は着れても(お太鼓帯が、締められるという方も多くいるでしょうが)、時代劇衣装の着付けというのも様々です。
 着物だけなら、男性はそうでもない処があるものの、ただ鎧となってしまうと・・・これがまた大変です。

 また女性に関して言えば、本当ーーっにっ、様々な着物の形態が多く、特に帯(!)・・・でしょうか。
 時代によっても、また貧富の差によっても、相当に・・・形も大きさも違いますし、そして身分もあります。
 ・・・私自身としては、ごく普通の袴の着付けは出来ますが・・・江戸時代の大奥モノの衣装なんて、さて一体どぉしましょう・・・。 (-_-;)
 とにもかくにも、あの帯はデカい・・・★ (^_^;)
 という訳で、衣装を着付けて下さる方も、必要になります。

一番右側の女性が、私・・・。吉原の百人斬りのシーンの撮影現場です★

 また、高い場所から落ちるシーンや、格闘シーンなどあって、ゴロゴロ転がったりすれば・・・危険防止の為にも、出演者には、肘や膝にサポーターを付けて保護をして撮影に臨みます。
 すると・・・それが袖口や裾なんかから見えてしまう、なんて事もありますから、何箇所かを縫ってもらったりなど・・・本番前の衣装さんは大忙し(!)です。
 着る物、鬘ときて小道具、大道具も特別製作ですし、武器なんてモノも様々ありますよね。

●そして、ロケを行うなんて事になったら、これまた大変な作業です。

 全員電車で行ってたら、とってもお金が掛かるので・・・大型のロケバスなどで、スタッフから出演者から、みんなで揃っての団体移動(!)
 聞けば「ロケバスの運転手」という職業もあるのだそうですが、番組によっては、ADさん自ら運転するロケバスもあるみたいですね。 (^_^;)

これは昔のロケ現場の写真。・・・林先生、若いですね

 ロケマネージャーの仕事は過酷で、出演者や番組スタッフの宿泊施設の押さえは勿論、出演者全員が支度をする場所の確保(大抵、公民館や体育館)を、しなくてはなりません。
 また撮影現場は、丁度いい季節に行われれば良いのですが、そうは問屋が下ろしません!
 大体、暑過ぎたり寒過ぎる場合が多いです。
 昨年の「風林火山」の川中島のロケなどは、木陰一つない場所で、とても大勢のメンバーでロケを行っていました。
 熱中症の患者を出さない為にも、スタッフが・・・たとえばポカリスエットや麦茶などを、絶えず配布する姿が見られます。

●また寒さと言えば、何年か前に大砲を撃つシーンを撮影していたのですが・・・。

 それがまた物凄く寒い日で、凍傷になりそうな位に鉄製の大砲が、冷たかった・・・。  (T_T)
 しかし絵的に言え「大砲を支えずに砲撃をするシーンというのが、有り得ない!」為に・・・全員「ホカロンを掌に当てて」、砲撃のシーンを行っていたのです。

 つまり、掌・ホカロン・大砲というように、挟んで撮影していたのですね☆
 ・・・ですが、手元のアップのシーンでは、ホカロンが、ばれて」しまう・・・。 (T_T)
 なのでやむなく、本番だけは氷より冷たい大砲に手を当てての砲撃シーンの撮影となったのだそうです・・・が、現場ではそんな事が結構あるのだそうです。

●また、馬が出てくれば・・・これまた費用が掛かります。

 何故って馬は、独自でロケ現場に来てくれる訳ではない(!)からです。
 牧場から、車に載せて現場にやって来る訳ですから、その車両の費用は勿論、ガソリン代とか。(最近、高いですねぇ・・・!) (^_^;)

時代劇なら、馬装も必要。これがまた高価で★

 そして、・・・馬は生き物です。
 ご飯も食べれば、ボロも出しますので、その世話をする人間も必要になりますし、また馬の宿泊施設も必要なら、そのお世話をする人達の宿泊場所も必要になるのです・・・。
 人はともかく、馬の宿泊施設はやっぱり少ないようで、場所によっては、日帰りを数回重ねる場合もあるそう(!)

 また時代劇といえば、鬘・衣装の他に、履物や小道具などなど、現代劇を撮影する以上に必要不可欠な物が発生します。
 時代考証も勿論必要な訳で、これがなければ「その時代としては、存在しえないシーン」を乱造してしまいます。

●私は、時代考証をする先生とお話をした事がありますが、ドラマ性を高めるドラマ制作部と、時代性を追及する時代考証側とでは、けっこう戦いがあるのだそうです。

 ドラマとしては面白いが、その時代に・・・そんな事はありえない。
 だけどエンターティメント性を高める為には、敢えて監督は、それがしたい(!)
 ただ・・・それが過ぎてしまうと、もはやどれが本物か判らなくなってしまう事が、怖い・・・。
 「知っていて嘘をつく」事と、「知らないで、無茶苦茶する」のは違うのですが、見ている方からすれば、それは一体どんなものなのでしょうか。

時代考証の先生が書かれた著書

 ・・・しみじみ、しみじみ思うんですけど。
 こういうのを正しく伝えていくのって、ホントに大変なんですねぇ~。 (^_^;)
 武術一つにしても、日本ではもう・・・たった一人しか継承者がいない流派なんてのも多くあるのだとか。
 人が正しく伝えていかないとどんどん変な方向へ行っちゃうし、伝えなければ無くなっちゃうし
 2008年は、こうした事も多く伝えるイベントも、頑張ってやっていけたらと思います。

山野亜紀エッセイ・目次は、こちら!

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