はわゆの日々(山野亜紀注:このエッセイ集の、開設当時のタイトル★)もここでやっと、第3話目を迎える事が出来ました。
2002年の梅雨頃から準備を始めて、様々な苦難の挙句、どうにかこうにかここまで辿り着けたのはひとえに、HP制作を手伝ってくれたEtsukoさんと、林先生のご苦労の賜物です。
本当に、有難うございます。
●さて、「お江戸の作法教室」と銘打って始まりました、この波和湯風太郎シリーズ。
今回は何故こんな無謀な連載が始まったのかを、お話したいと思います。
・・・ところで、私こと山野亜紀のプロフィールには、私の殺陣やアクションの稽古暦が載っています。
私は最近、たまに殺陣の代理講師をも、務める事があるんです。
・・・この経験なくしては、「風太郎の初めて物語」は語れないんですね。 (^_^;)
大河ドラマで言えば、「元禄繚乱(1999年)」が放映されていた夏のことです。
・・・西暦2000年を迎えるという事で、大河ドラマはスーパー大河と銘打って、特別な予算が組まれたのだそうです。
初のデジタル放送で送る大河ドラマで、演目は「葵~徳川三代~」。
出演陣もそうそうたるメンバー(主演・西田敏行)で、ドラマ撮影は大体いつも、8月のロケ撮影から始まるのですが、その折には、林先生が筆頭を務める事務所のメンバーも、この時はまだ・・・撮り残しのある「元禄組」(いよいよ討ち入りの場面 を撮っていた頃ですね)と。
これから始まる「葵組」とに別れて、「葵組」の方は、張り切ってロケ地へと出掛けて行ったのです・・・。
「関が原の合戦」で始まった、この「葵~徳川三代」のロケ。
それは、とても大規模なものでした。
ちなみに、林先生率いるプロダクションの正規メンバーは、男性のみで女性はいません。
そしてロケが大規模と言う事は、使う俳優の数も当然多いので、当時の林先生は・・・自分の弟子は勿論、自分が講師をしている劇団の人達までも大勢、ロケに参加させる積りでした。
・・・ですから東京には、女性しか残っていなかったんですね。 (^_^;)
「養成所とかのレッスンなんだけど。これ、自主トレで済ませても良いんだけど、どうせめぼしいのは皆、現場に連れてっちゃってるしで、残っているのは女の子と初心者だけしかいないから、代理で殺陣の講師をやってみないか?」
・・・と林先生に言われて、私こと山野亜紀は悩みました。
今まで勿論、ずっと稽古をしては来たものの。
稽古中に、何となくマンツーマンで教える事はあったけど、大勢の人達を束ねて先頭切ってやった経験はないのです。
先程のお言葉を聞いて取り敢えず、東京にはめぼしくないのと女性が残っている事が判りました。
まずは何度か、養成所に連れて行ってもらって・・・林先生のレッスン助手を務めさせてもらい、一度は私が仕切る処を林先生に色々と見てもらってから。
・・・取り敢えずは、まぁ何とかなるだろう・・・という事で、林先生は、意気揚々とロケ現場へと旅立ってしまいました・・・。 (T_T)/~~~
・・・ところで、学校で言うところの「新学期」を養成所では、「クール始め」と申します。
1クールは3ヶ月で、タレント養成所という所はどうも、1クールに一度の頻度で「新人オーディション」を行っているようです。
●ちなみに、入所初めに入会金を支払ってからは、後は月謝制というシステムです。
私が代講を務めたその養成所は、その日がたまたまクール初めのレッスンでした。
オーディションに受かったばかりの新人達が、クール初めのレッスンへと雪崩れ込んで来ます。
・・・レッスン場に入ってみると、この広さに対してこの人数・・・っ!
本当に、人の多さに驚かされます。 (;一_一)
そして最近の傾向でしょうか。
興味本位でレッスンを選択はしてみたものの、「こりゃダメだわ」と二度とこのレッスンには顔を出さない人も多いです。
・・・・・・まぁ。
そういう事もあり、1クールが終る頃には・・・何となく、レッスン場の広さに見合った人数になっていたりするのですが・・・それはまた後の事ですっ。
クール初めの養成所のレッスンは、代講初心者の私としてはもう、本当にっ。
・・・実にもう、シッチャカメッチャカ。 (T_T)
稽古場の広さだけでいえば、講師としては大体10人くらいか、頑張っても15人が適当な数だと思うのですが・・・でもその日は、私1人に対して、敵の数は30人(!)は居ました。
・・・何となく。
印象として、文字通りの芋の子状態で、若さと熱気で、こちらの方が窒息しそう・・・・・・。
そして初心者にはまず、「現代アクション」と「立居振舞」の稽古。
これは、必ずやらなくてはならなかったのです・・・。
レッスンで行なう「立居振舞の稽古」は、到ってオーソドックスでシンプル。
時代劇の稽古の先駆けになるので、まずは時代と扮装の違いから来る足捌きが、現代のそれとは全く違う事を説明します。
・・・そして座礼(この場合は武道礼)に立礼。
摺足で歩く事を説明し、これでゆっくりバージョンと速いバージョンで前後左右、自由自在に動けること。
それから殿様に「近ぅ寄れ」と言われた時等に行なう、男女別の膝行(しっこう)。
そして「鎧の時代には、正座の作法がまだ作られていなかった」事を説明して、その時代の座礼のやり方(左右両方)。
戦場などで伝令が行う、略式の所作。
・・・この他に、風太郎シリーズの6・7話で紹介しましたような、道で人と擦れ違う作法や、入退室の作法。
・・・・・・大体、こんな所でしょうか。
簡単なようですが、稽古をさせてみるととても時間が掛かります。
礼法は良しとしても(稽古は「礼に始まって礼に終る」ので、個人的な注意も早い時期に出来る)。
・・・・・・それにしても、まず現代人は脚力弱いです。
畳での生活よりも、椅子で過ごす時間が多くなって来ているので仕方がないのでしょう。
たとえば正座から立ち上がるだけで、フラフラしてしまったり。
慣れない摺足をすると、足元からキューキューと音が鳴ったり。(思いっきり踏み込んでいるせい…???)
現在の様な正座の作法が定まったのは、三代将軍・家光の時代と言われているそうですが、それ以前の鎧の時代の正座(安座)をやらせてみると、現代人が如何に「足腰固い」かがわかります。
さて安座なんですが、胡座(あぐら)の、足を組まないバージョンと言えば・・・何となく、想像できるでしょうか。
今の高校生や20代の人(2003年当時)は、下手をすると胡坐が出来ません(!)
また、正座からスムースに安座になって、また正座に戻るというのがありますが、これをやるだけで足を吊らせてしまう現代の日本人。
・・・侍が今の日本人をもし見たとしたら、さぞかし嘆き悲しむ事でしょう・・・。
【写真下は左から、正座から重心を移動して安座へと移る様子】
正座 | 重心を移動 | 安座 | 重心を前に |
・・・と、それはいいのですが。
私こと山野亜紀が取り敢えず、講師の仕事というものに慣れて来た頃の事です。
ちなみに「山野亜紀が行う殺陣の稽古」は、私が女であるが故に・・・(と、思う!) (^_^;)
他の男性講師よりも、過剰なほど口数多くて、話題が豊富。
立居振舞についても、「時代小説でもこう書いてあった」などと喋っている内に、ふと気が付いたのです・・・。
そういえば、馴染み深い「痛快!時代劇」って。
主人公は大抵・・・荒唐無稽と言おうか、その時代では絶対に有り得ないと言おうか。
とにかく、一般常識を欠いている人が多いような気がする・・・。
「暴れん坊将軍」は、暴れん坊だし。
「遠山の金さん」は、桜吹雪だし。
とにかく江戸の町へとやたら繰り出して、礼儀知らずの無頼な連中と喧嘩をしてるし、よく爺にも怒られていますよね。 (^_^;)
この時代の普通の・・・と言うか、ちゃんとしたとでも言いましょうか。
とにかく真面目で地味な人達は一体、どんな風に暮らしていたのでしょう・・・。 (-_-;)
・・・こんな時。
昭和一ケタ生まれの、私こと山野亜紀のお母さまはこう・・・のたまいます★
「あたしの時代じゃ、ちゃーんとお作法の時間が授業にあって、先生がみんな教えてくれたわよ。・・・今は高校でもお作法の時間がないのねぇ。え?・・・お作法と言えばあなた、小笠原流よ♪」
そんな事も知らないのぉ・・・?という、口っ振りなんです。
・・・・・・・・・お母さん。
貴女も知っての通り、あなた様の娘サンは、共学の普通科。
ましてや、都立高校には、そんなものは無いっ。 (^_^メ)
でも私には、林先生という強い味方がいたのです!
殺陣の講師の他に、NHKの大河ドラマの殺陣特訓の助手を勤めるチャンスを先生が下さったおかげで、私はその時代々々でのお作法の話や、「ドラマではカットされてしまう」けれども「ちゃんとやるとこう」といった立居振舞のお話を、色々と聞く事が出来ました。
・・・そんな時、興味深いわと。
面白がってくれたのは、このHPを創設する時に手伝ってくれていたEtsukoさんでした。
彼女は漫画が好きで、絵の方では、浮世絵(主に美人画)をこよなく愛しています。
HPでそういう作法の紹介を、物語形式でしてはどうだろう。
・・・当時の二人は、意気投合しました。
また、風太郎の苗字を「波和湯」にしてみてはどうだろう、と提案をしてくれたのも彼女でした。
・・・このHPに、親しみを覚えてくれるのではないか。
そして彼女は試みに「波和湯徳之助」を推してくれたのですが、名字だけ戴いて、名前は風太郎となりました。
・・・でも、思い付きとは・・・初めはとても楽しくても、段々と苦しくなっていくものです・・・。
何しろ、立居振舞の稽古で行なっているのは、ほんの基礎ばかりですから(!)
・・・何故って、撮影現場には、ちゃんと所作指導の先生がいらっしゃる(!)からです。
実際には、所作指導の先生の仰る通りにすれば良い訳で、勿論基礎が出来ていればこそ、その場に合せて柔軟に動ける訳ですが、基礎だけでは、とても物語までは作れません・・・★★★
私の聞きかじりも、とにかく一生懸命にアンテナを張っていないと、ネタ切れがもうすぐに来てしまうという所。
・・・毎回一話にひとつ。
何を紹介して、どうやってドラマに盛り込むかも、毎度の悩みの種です。
そして本当は、一話々々の長さを揃えたかった・・・。(新聞の連載小説風に)
林先生は、今の所面白がって下さっていますが、いやぁ・・・はてさて。
応援、宜しくお願い申し上げます。 <(_ _)>」