まず、自分が怪我をする(または相手にさせる)。
リハーサルでも、本番でも時間がかかる。
時間が掛かると言う事は、非能率的である。
だから、自分の相手に失礼だし、周りの人(役者やスタッフ)にも迷惑をかける。
そして未熟な芝居を観るお客さんにも、大変に失礼である。
従って、最終的には自分自身が損をする・・・それは何故か。
殺陣が未熟だから、今回はさせてもらえても、次には仕事が来なくなる事に繋がるからだ。
・・・上記は、2003年に初めてのHP公開に向けて林先生から戴いたメッセージ・・・だったんですが★
いかにも、林邦史朗先生らしいお言葉ですよね。
特に、合理性と能率の良さを、ご自分の殺陣の現場での信条(!)としておられたお方でしたから。
・・・そのプライドと、ポリシーが感じられます。
●さて、ここでまたお話は、「殺陣の世界」に戻ります。
殺陣は、お芝居の中に存在しています。
そして芝居とは、皆さまご存知の通り、虚構の世界です。
舞台では、映像とは違い「芝居上の嘘」が多くなります。
・・・例えば、「芯を務める役者」に一息にバッサリと斬られたからといって、「絡みを務める役者」は舞台上で、そのままに死んでいる訳にはいかないんです。
死ぬ芝居を続けながら、実は舞台袖に引き揚げるなんて事はとてもよくありますし、その時にはついでに、もうこの場面以降使わない小道具を小脇に抱えて捌けていったりもします。
・・・リアルで言ったら、死ぬ人間はそんな事はしませんよね?
虚構の世界でありながら、立ち廻りのシーンは一番テンションがあがって、危険な場面でもあります。
ルールを知らないと、とんでもない事故に繋がる事にもなります。
そのルールを。
「誰かその場で教えてくれる」と思っている人もいれば、「これ位、知っていて当然だ」という人もいます。
勿論、ある事すら知らない人もいるでしょう。
そして、たとえプロの指導の下でも怪我は、起こってしまう事があります。
・・・例えばのお話なんですが。
①雨のシーンで、スタジオの床が濡れていていた為に滑って、腰を打ってしまった。
②ロケで坂道を駆け下りていて、足首を捻挫してしまった。
③膝蹴りをしたら相手の脇腹に本当に当たってしまって、肋骨にヒビが入ってしまった。
④前の敵を槍で突こうとして大きく振りかぶったら、たまたま後ろに人がいて、槍の鐺(こじり)が眼に当たって、失明させてしまった。
⑤合戦シーンで馬に、踏まれた、蹴られた、落馬して腕を折った。
⑥落馬した時に頭を打ってしまって、言語障害になってしまった・・・等々。
こういった怪我の原因は、林邦史朗先生に言わせたら、ほとんどが自分の不注意か、立廻りの技術の未熟な結果なのだそうです。
・・・現場には、最低限の技術と立廻りのルールを、しっかりと身につけてから望んでほしいと、林邦史朗先生は長らく語り続けて、その生涯を終えられました。
そして、自分の為に(役者には一切、何も保証をされていませんから)。
何か遭った時の為にも、保険に加入する事を併せて、お勧め致します。