1つ目は、1976年に・・・林がボランティアで「誰でも気軽に殺陣が学べる場である、若駒アクションクラブ」を始めたのですが、その頃にはすでに、もう仕上がっていたと本人から聞いています。
さて、林は「何故この運動を創始したのか」を著書「足裏呼吸法」では、このように説明をしています。
「殺陣は、実は以外に重労働」なのです。
「長い刀を振っての立ち廻り」というのは、例えそれが木刀であり、真剣ほどの重さはないといっても、長丁場でとなると、かなり疲れます。
・・・なので林が若い当時は、まずは激しい準備運動をしてから「技や動きの稽古を行っていた」といいます。
要するに、体力を付けて長丁場を乗り切ろうというので、内容としては「腹筋や足上げ、跳躍運動などをかなりな数でこなしていた」と言いますが、当時は林も若かったとはいえ、息が上がって消耗するほどの準備運動であったそうです。
それから、いよいよ殺陣の稽古に入るのですが・・・これには林も何時の頃からか「どうもこれは、合理的ではないな」と感じるようになっていました。
なぜなら「準備運動は、あくまでも準備運動」であって、今やりたいのは立ち廻りの稽古だからです。
「立ち廻りの稽古を、最高の効率で行うには一体、どのようにすれば良いものか」
林の模索は、続きました。
・・・武芸の世界ではよく、「その運動を例えば千回やれば、いずれ自然と力が抜けて、技(又は芸)が身に付くようになる」と言われていますが、ある時林は気付きました。
逆に「脱力する事を先に会得して」しまえば、効率よく稽古が出来るのではないだろうか。
・・・しかしながら、脱力するというのは実は難しい技術で、人は緊張する事はたやすいのですが、「丁度良いかげんの脱力」というのは、もっとも難しい事なのです。
・・・何しろ、脱力し過ぎてしまっては、倒れてしまいますから。(笑)
リラックスをしていながら、きちんと立っていられて、そして何かあれば瞬時に行動できる程の柔軟性があるように自身を持って行くには一体、何をどのようにすれば良いものだろうか・・・?
そこで林は、それまでに読み溜めていた書物や健康法、運動法などを探り、この「林流健康体操(書籍では、足裏呼吸法)」を編み出しました。
人は、1年365日と同じ数ほどの間接を持つと言われる生き物です。
それを末端から、自然呼吸法を取り入れてほぐす技術を取り入れた林独自の健康体操が、まずここで完成をしました。
それから20年ほど経って、林が60歳の折に前立腺がんを患ったのを機に太極拳を学んでからは、それに「立禅」を取り入れて、身体も心も整えるといった健康法になっていきました。
その他に、林は自身が創始した「林流護身術」の中で、「護身体操」を2種類、考案しています。
これは、林が長らく・・・殺陣師人生を歩む中で、俳優以外の方にも何か「自分の出来る事で、還元できる事はないだろうか」と考えるようになったからでもあるのだと、書き記した物にあります。
・・・さて、何の素養もない方には「武術のステップも技も、ひどく難しく感じられる」ものです。
そこで林は、少しでも身体に馴染みやすいようにと、やはり自然呼吸法を取り入れて、ゆったりと太極拳のようなペースで行える「様々な武術の技とステップを繋げての健康体操」に護身体操を仕上げました。
「これに、音楽を付けてくれる人がいればなぁ」 と良く口にしていましたが、最後まで曲が付くこともなく、今ではごく少数の人が伝えるばかりとなっています。
このHPでは、林邦史朗の研究成果や稽古様式の目録を公開し、映像や文献などを整理した上で必要な方には有償で申し受け、後世に伝える事を目的の一つとしています。